精神科ナースがウェルビーイングについて考えるブログ

現役精神科ナースが「よりよい人生」について考え、共有します。

あなたの中の「否認」、受け入れられていますか?


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こんにちは。精神科ナースまさです。

 

私のチームでは「アルコール依存症」の患者さんの疾病教育も行っています。

以前少しお話したのですが、アルコール依存症って別名「否認の病」とも言われているんです。

その理由として、アルコール依存症の患者さんはご自身がアルコール依存症であるということを受け入れられないことが多いんです

周りの人からすると「え?」って思われるかもしれませんが、否認といっても様々な種類があるんです。

 

そして今回は、その否認の種類を解説していくのと同時に「自分はどうなんだろう」という内省にもつながり、学ぶことができましたのでぜひみなさんも「自分はどうなんだろう」という視点で一緒に考えてもらえればぁと思います。

 

 

 否認の種類

まず、冒頭にも申したように「否認」と一口に言ってもいろいろな種類があるんです。

 

・自分は依存症なんかじゃない。少し飲みすぎただけ自分でコントロールできる

自分の金で酒を買って何が悪い。

・あいつ(自分以外の誰か)がストレスをかけてくるから飲んでしまうんだ。

・酒をやめても他の問題が山積みだから、酒をやめたところでなにも変わらない。

酒で早く死んでしまうなら別にいい。だから放っておいてくれ。

飲まないことのほうがストレスだから、飲んだほうが体にいいんだ。

・やめたいけど、やめられないから困っているんだ。

などなど。

 

パっと思い浮かぶだけでもこれだけあります。これらの言葉は私が仕事をしている上で非常によく聞く言葉です。

おそらく、みなさんがイメージするアルコール依存症の患者さんは、最後の「やめたいけど、やめられないから困っている」状態の人を想像するかもしれませんが、このように言われる方はけっこうレアです。

私はむしろ、このように言われると治療が進んでいるとさえ感じます

ほとんどの方が「やめられないから困っている」と口にしません。

 

みなさんの中には「自分のお金で買ってるんならいいんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、精神科に入院になる状態まで飲んでいるのであれば、自分のお金だろうとなんだろうと、周囲か自身の健康に被害がでていることは明白なわけです。

周囲への被害が省みることができないことは、立派な否認です。

また「自分の健康被害はどうでもいいし、早く死んでもいい」といわれる場合も、ただお酒を飲むことを正当化しているだけです。

それによって生活保護を受けるようになれば、私たちの税金がその生活保護に充てられるわけですし、そもそもの医療費の7割分の負担も国民の税金からです。

残念ながら、入院する程にまでなってしまったら誰にも迷惑をかけずにお酒を飲み続けることはできないんです。

 

では、自分たちはどうだろう?

私たちはそんな患者さんへ病気に対する教育もしていくので、その内容などはまた機会があれば書いてみようと思います。

 

私が今回伝えたいのは「じゃあ、自分はどうなんだろう?」っていうことです。

お酒に関することだけではなく、仕事や勉強、人間関係などの大きな枠組みから、ゲームやスマホの使い方、SNSとの付き合い方などの細かなことまで「自分は否認していないか?」と思ったのです。

まぁ病気と診断されているわけじゃないので、それほど気にすることはないと言われればそれまでなんですが「自分の不都合を受け入れられているか?」と考えると、自分も否認している部分が多いなと感じたのです。

 

「仕事で疲れているから勉強できない」という日が何日も続いていないか?

スマホを使う時間を少し減らせばもっと有意義なことに使えるのに、無駄に消費していないか?

など、自分が不都合になることに目をつぶっていた自分がいたんです。

 

もちろん、休息は大事ですし、できないことをできないとちゃんと「できない」

って理解できればいいんです。

 

「やろうと思えばできるけど、今はやらない」

これは、できない自分を受け入れられていない=否認だと。

 

ものすごく厳しいことを言っているようですが、そうではなくて

「できてない自分でもOK」と言えるようになるべきだと思うんです。

そこから初めて、どうすればできるようになるのかを考えていくんです。

ですので、「お酒がやめられない自分がいる」ていう事実を認めて、初めて治療が進むように、「できない自分を認めてあげる・自覚してあげる」ことから次に進めるようになるんだなと。

 

まとめ

今回は厳しく聞こえたかもしれませんし、アルコール依存症の患者さんの例をもってきたので、自分には関係ないと思われるかもしれません。

しかし、否認は誰にでも起こりえることであって決して他人事ではありません。

そしてなにより、否認を続けている間しんどいのはあなた自身です。

ずっと心のどこかでなにかが引っかかっているような感覚は、もしかしたら「否認」が隠れているのかもしれませんね。

 

できない自分をまず自覚しましょう。

そして、できない自分にOKを出してあげてください。

そこから初めて次のステップに踏み出せるので。

 

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

私個人への相談等も承っておりますので、お気軽にどうぞ~ 

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